先端技術とハイタッチな感性で、人々に「楽しさ」を届ける

ここ数年、体感型VRマシンの開発でヒットを続けている同社。その背景にあるのが、デジタル・アナログのハード技術、メカ技術、ソフト技術、CG・サウンド制作などからなる総合力である。こうしたハイテクノロジーに人間ならではのハイタッチな感性をプラスし、もう一歩進んだ「ハイパーエンターテインメント構想」を実現していく。

新型ハード基板

 同社が九七年に完成させた新型ハード基板。アーケード競馬ゲームに搭載されて以来、アーケードマシンの心臓部として使われている。また、業務用ビデオゲーム機向けの基板も開発した。どちらも高速RISCチップをCPUに採用。また描画回路の性能にも優れ、オブジェクトの立体表現力を示す最大頂点演算能力を大幅に向上させている。現在は、さらに次世代型の新基板の研究開発も進行中だ。

グローバルビジネス

 現在、同社の直営アミューズメント施設は、国内に四三〇カ所。米国では四〇〇カ所を数えるまでに至っている。また、未来の巨大市場として中国市場にも注目し、すでに上海に六店舗を開設。このほか、ロンドンを拠点として、ドイツ、フランス、イスラエル、スペインなどにも進出し、グローバルな事業を展開中だ。

技術力

ハード基板を開発するデジタル回路設計技術をはじめ、アナログ回路設計技術、電気制御技術、メカニクス、インダストリアルデザイン、ソフトウェア、そして3DCGやサウンドの制作まで、幅広い技術とノウハウで製品を生み出す。

事業展開

都市型のテーマパークを次々とオープン。ハイテクノロジーに、ハイタッチな感性の演出をプラスした「ハイパーエンターテインメント構想」を打ち出している。

企業風土

すべての基本にあるのが、「WILL」という考え方。MUST(~しなければならない)という受け身の姿勢ではなく、WILL(~したい)という自発的な姿勢を重視。仕事を楽しもうという考え方が社内の随所に表れている。

業界初の体感型通信競馬ゲーム

 九七年夏に登場した競馬ゲームは、業界発のライド型通信体感競馬シミュレーションゲーム。ジョッキースタイルで、激しく身体を使って操作すると、その通りに目の前の大画面でレースが展開されるというもの。最大四台の通信が可能で、レースは8頭だて。しかも、8頭の馬すべてが、本物そっくりにリアルに動く。こうした高繊細なCG描画を可能にしたのが、従来の基板に比べてCPUパワーをアップした新型システム基板だ。騎手の体感ができるとあって人気は上々。業務用マシンとしては、かつてない大ヒット製品となった。  当社ではここ数年、プレイヤーの自然な動き・操作をもとに仮想空間で3DCGを展開するゲームを開発。アーケードマシンの新しい機軸を築いている。

入社後初めての仕事が、
新型システム基板の開発だった。

 真鍋一樹が所属する研究部は、ハード基板の研究開発から、製品開発用のツールづくりまで幅広く手がけている部門だ。一通りの研修を受けて研究部に配属された新人は、さらに部内で技術的な研修を半年間かけて消化する。
 「研究部では、PCBを設計したり、カスタムICをおこしたりということをします。デジタル回路をつくるための基礎知識、ツールの使い方などをまず覚えないといけないんです。研修では一人で一つ、CPUを使ったコンピュータボードを設計していきます。しかも、だいたいの仕様を指示されるだけで、細かい部分は本人に任されます。そして、きちんと動くものに仕上げていくわけです」。
 研修後、真鍋は、あるプロジェクトに途中から加わった。アーケード競馬ゲームに搭載された新型システム基板の開発である。この製品は、メインボードとメモリボードの2枚構成になっており、彼の担当はメモリボード。初めての仕事が新規ボードの開発という大きなプロジェクトになったわけである。
 「今回、初めてフラッシュメモリが使われたんです。今でこそメジャーですが、当時は高くて使われていなくて、詳しい先輩もいないので、まずはフラッシュメモリを理解することから始めました」
 また、通常ならメインボードのCPUからメモリに書き込みをするのだが、それではCPUに負担がかかるため、メモリボードに専用のCPUを搭載した。メモリボードが単独で動き、一つのコンピュータシステムになっているわけである。そのために、当初の予定よりも大幅に時間を費やしたという。
「新基板のメモリボードを経験したたので、次はメインの描画、演算部分の設計に携わってみたい」という。

「楽しい」を
メカと心理学の
両側から追求する

 「学生の頃はレジャー工学というのを専攻していたんです。心理学側からは遊びに対するアプローチはあったと思うんですが、それと理工系の技術を融合させた感じですね。人がどういうもので楽しんだりするのかを考えたり、人を楽しませるロボットや装置をつくったりしていましたね」
 そう語るのは、山田翔である。当社に入社したのも、人を楽しませる体感ゲームをつくりたいと思ったからだ。
 入社した年、入社して初めてのプロジェクトに参加したが、これは途中で抜けることになった。というのも、以前に自分で提案していたアイデアが認められ、いよいよ製品化へと進むことになったためだ。その製品は、三年ほど前にヒットした。自分で提案しただけに思い入れが強く、なかなか妥協点が見つからずに苦労したという。
 「これは水上バイクのゲームです。日本では水上バイクは免許がないとできませんし、やるとなると海外に行かなければいけない。やりたいけどやれない。そんな夢を仮想空間の中で実現してみたらどうだろうと思ったんです」
 ところで、山田が当社に入ったのには、もう一つ理由がある。
 「大学時代、リハビリマシンの取材にも行ったことがあるんです。人間って、楽しいと本当に自然治癒力が高まるんです。いつの間にか病気が治ってしまうという現象もあります。どんな楽しい環境を作れば、病気が治りやすいかという研究もしていました。ただただ痛いのを我慢しながら、義務感にかられて取り組んでも面白くはない。中には遊び感覚でできるように工夫している病院もあって、そこの患者さんは確かに治りが早かったんですよね。
 当社では福祉機器も手がけていますし、将来はリハビリをしていると感じさせない、楽しいリハビリ機器をつくってみたいですね。それが最終的な夢です」。