動植物・土壌など生態系の調査、
地域振興計画・環境保全計画の立案、
景観設計・公園設計などが仕事です
エコロジー、デザイン、コンピュータ
の3つの分野の先端技術を融合
同社は、エコロジー、デザイン、コンピュータの3分野の先端技術を駆使し、地球環境から地域福祉まで幅広いテーマに着手。環境アセスメント-動植物・土壌など生態系調査からレポート作成、地域計画シンクタンク-地域振興計画・福祉計画や環境保全のための行政施策立案、ランドスケープデザイン-景観設計や公園・動物園・庭園・博物展示施設の設計などまで。3つの機能を統合し、豊かな環境づくりを追求している。
自然の力を生かす
当社の建築設計部門の仕事は、単に建築物のデザインだけで終わらない。競技場やメインの建築物を含めた都市公園や自然公園、あるいは動物園など、とくに自然や景観に優れたロケーションを舞台とした大規模なデザインが多い。自ずと、景観との調和をめざした造形が主流になり、周囲の自然や景観の中に溶け込み、人々に楽しみや満足感を提供するような景観を考えていくことが圧倒的に多い。
たとえば、最近の例としては、北関東地区のある湖周辺の景観デザインがあった。この湖では、湖水の汚染が徐々に深刻化しており、なんとかして浄化を図っていきたいというニーズがあった。幸い、周囲には葦をはじめ、緑に恵まれている。これをうまく利用できないだろうかという観点から考え出されたのが、自然の力を利用して浄化するというアイデアだった。まず、ポンプで湖水を汲み上げ、緑の茂った湿地帯を通じてまた湖へと返していく。その過程で、植物や土の力で浄化していこうというものだ。また、やぐらのデザインも木材を使い、親子連れなどが景色を楽しめるような設計になっている。
環境計画を考える
環境計画部の業務は、都道府県の環境管理計画づくり、環境基本計画づくり、環境アセスメントなどが中心になる。まず、綿密な現地調査や豊富な資料収集から、現状の環境条件を把握。それをもとに、貴重な動植物や自然環境の特色などのデータを解析し、地域の特徴を評価していく。もちろん、各自治体に向けた環境計画の提案も行う。また、防災関係のコンサルティングも欠かせない業務の一つだ。建設省ではグリーンベルト計画を進めており、従来はコンクリートで固めていた斜面のリニューアルが叫ばれている。コンクリートで固めた斜面は、景観的にも、生態系の面でもよくはない。そこで、個々の地形条件などに応じて、より自然を生かした斜面を考えていくわけである。「将来、どんな日本にしたいのか」。そうした観点から将来像を描き出していくわけである。
環境とは何か
動・植物、その生態系、水質、大気、土壌など、私たちの環境は多方面から、それも確実に変化してきている。そうした環境についての基礎的な研究・対策に取り組んでいるのが、地球環境室である。ただし、環境とひとくちに言っても守備範囲も広く、地球環境室のメンバーが持っているテーマも多種多様だ。中には、小・中学生を対象にした環境教育のプログラム作りといった業務もある。具体的な例としては、河川の水質といったテーマもある。一つの河川について、水中や周辺に生息している昆虫や小動物、鳥類、魚類、藻類などにも目を向け、水質の汚染度合いや水量、水辺などを細かく調査していく。開発途中の場所に出かけていくこともある。そして、収集したデータをもとに、専門家の意見も聞きながら、評価を行い、最終的な評価資料の作成へと移っていく。
らしさを追求する
国で定める環境基本法に基づき、各自治体ではそれぞれ個別に環境基本計画がつくられている。こうした動きを受けて、当社では、自治体側の要望、調査結果、そして地域住民の意見をとりまとめ、未来像を描いた計画づくりをサポートしている。その際には、綿密な事前調査が行われ、幅広い範囲にわたって情報が集められる。地域の人々が、自分たちの地元をどのように思い、どういった景観を大切にしているか。そんな細かな情報を拾うのである。また、一つの県内であっても、地域ごとに景観は違うため、各地域ごとの個性や、特徴的なものを見つけだしていく。さらに、特徴的な景観はどういう要素で構成されているかを解析。地域らしさを生かしながら、守るべきものは守り、ないものを創り出していくのである。そこで、ポイントになるのが「地域らしさ」をつかむセンスである。ここでは何が大切なのか、それを適切に見極めることが欠かせない。常に人間と自然とのバランスを考え、調査結果に自らの哲学やノウハウを盛り込む。そうして固められた計画が、街づくりや自然環境の保全・利用などに生かされていくのである。
生態系を見る
日本国内にはおよそ5000種の高等植物が認められている。これはヨーロッパに比べると非常に多い数字だ。こうした膨大な種類の植物はそれぞれ地形・地質・土壌などを基盤として生育している。また、その植物を餌場や住処などに利用して動物が生息している。これらさまざまな要素が複雑に絡み合って、生態系全体のバランスが保たれているのである。生態系全体の保全を意識すれば、単純に希少種だけを重視するのではなく、立地固有性や動物の生活の場としての機能性など、より多くの価値軸で評価していくことが大切になってくる。もう一つ加えるなら、人間の生活との関わりも考えていかなければならない。開発計画を実施する際の自然環境の評価などではとくに、植物調査員の公正なジャッジメント、適切なコンサルティングが求められているのである。
シミュレーション
当社では、各部門の業務にコンピュータを積極活用している。環境の評価、分析、景観シミュレーションといった業務は、もはやコンピュータシステムの力を借りなければできないといったほどである。調査レポートから得られたメッシュデータの解析を行う「メッシュ解析支援システム」、CGと写真とを合成したりする「環境景観シミュレーションシステム」などが、その好例だろう。これらは社内で使うシステムではあるが、外部のクライアントに対して個別にシステムを開発・提案していくことも手がけている。 また、社員一人一人のパソコンはすべてLAN(Local Area Network)で直結されており、社内ネットワーク構築までがシステム開発室の業務になっている。基本的には、SE・プログラマの集団なのだが、中にはCG作成をメインに手がけているスタッフもいる。これは合成写真よりも、もっとリアリティ豊かなビジュアルでプレゼンテーションし、クライアントの理解度を高めていこというもの。こちらはむしろ、さらに、アート的な要素、システム的な要素、両面がからまって進められる仕事なのだ。