昨年7月、C号機打ち上げに成功。
そして、衛星通信の利用を身近にする
衛星通信の技術が私たちの日常に入り込んできた。「衛星デジタル多チャンネル放送」や、衛星と企業内情報システムとを融合させたサービスなど。今、当社からは、衛星を身近に感じさせるニュースが耐えない。未知から実用へ。「宇宙」と「通信」という、二つのフロンティアに挑み続けている同社に注目してみよう。
C号機
1997年7月に米国・フロリダ州から打ち上げられた、当社の最も新しい通信衛星。アジア・オセアニア地区をカバーする国際通信性、高速大容量通信など、最新の技術が光っている。
衛星デジタル多チャンネル放送
今、話題のC号機を使った衛星デジタル多チャンネル放送。映像の圧縮技術や多重化技術などが駆使されている。
衛星デジタル放送
衛星通信と地上系通信との融合を図ったサービス。受信用アンテナなどをセットしたパソコンに直接、大容量のデータ・動画・音声などを高品質で高速に伝送できる。
衛星通信ビジネスが、
本格的に成長する時代
今まで限られていた衛星通信の利用範囲が、大きく広がろうとしている。同時に、電気通信事業法や電波法などの改正によって自由化が進み、衛星ビジネスは本格的な競争の時代を迎えようとしている。 衛星通信が早くから着目されてきた理由として、「広域性」「同報性」「柔軟性」「耐災害性」「高速性」「大容量性」「多元接続性」といった数多くのメリットを持っている点があげられる。一カ所の地上局から多数の地点への情報の配信、逆に多地点から一カ所への集信が可能なほか、映像・音声・データといった各種の信号を大量・高速に伝送できる。また、地上局・車載局・可搬局を設置することで通信拠点の増設・移動ができ、地震など地上の災害の影響も受けにくい。さらに、一つの通信衛星に複数の地球局が多元的に同時接続できるなど、地上系通信にはない特長を数多く備えている。
こうした数多くのメリットが注目される衛星通信の世界にあって、当社では、昨年七月に三機目となるC号機の打ち上げに成功し、三機体制を確立。第一種通信事業者としてのインフラ整備を果たし、本格的な成長期に入ろうとしている。同社は通信事業が民営化された一九八五年に、Mグループ全二八社の出資によって誕生。グループの総合力を背景に、日本における衛星通信事業を切り開いてきたフロンティア企業である。
次々と広がる
衛星通信の多彩なサービス
もはや衛星通信は産業や生活に欠かせないものとなりつつある。取材現場と放送局とを結ぶSNG(サテライト・ニュース・ギャザリング)、取材現場から新聞社への写真や記事の伝送、自治体や電力会社などの耐災害ネットワーク構築、民間企業の社員研修や社内イベント、クローズドサーキット、オン・デマンドによるビデオ配信にも及んでいる。
今、話題を集めている一〇〇チャンネルの衛星デジタル放送も、同社のC号機を利用したシステムである。B号機を利用したものでは、九七年一月からスタートした衛星通信と地上系通信システムを融合させたものがある。受信用アンテナなどのキットをセットしたパソコンで直接、一二Mbpsの高速な衛星回線を介して大容量の動画やデータなどが受信できる。また、九六年にはA号機を使い、DAMA(デマンド・アサインメント・マルチプル・アクセス)方式による衛星電話サービスをスタート。災害時や山間部での建設工事の際に、専用回線として衛星通信が利用できるシステムである。これらのサービスを見れば、衛星通信の利用が大きく広がっていることが理解できる。
国際性、先見性、若さ、
そして多彩な技術分野の結集
さて、最後になったが、同社の技術者の仕事についても触れておこう。ユーザー個々の衛星利用のアプリケーションを企画・構築する「システム技術部」、衛星や地球局の仕様決定・調達などに携わる「技術部」、さらに最適な運用や軌道監視などを行う「衛星管制局」が技術者の主な配属先である。同社の技術職の特徴をまとめると、「多分野の技術の結集」「若さ」「先見性」「国際性」ということになる。
C号機でいえば、衛星本体は米国・H社製、ロケットはR社製、射場はフロリダ州。同社の技術者は一〇年以上先を見越して、仕様と搭載する通信機機を決定するわけだが、打ち上げに向けて数カ月交代で技術者がどんどん米国へと出張する。C号機のミッションディレクター(現地で、打ち上げの最終判断を下す)も三〇代半ばの社員が抜擢されている。また、技術者の専門分野も、航空宇宙はもちろん、通信工学、情報工学、電気・電子、機械、さらに理化学系まで、とにかく幅が広い。多彩な技術や知識のそう結集しながら、「宇宙」「通信」という二つのフロンティアに立ち向かっているのである。