感光性樹脂を核に、
半導体産業を支える
研究開発主導型の化学メーカー
当社は、半導体製造プロセスに欠かせない感光性樹脂「フォトレジスト」を主要製品にする化学メーカーである。1972年に日本で初めて半導体用ポジ型フォトレジストを開発するなど、早い時期から半導体関連の成長性・将来性に着目。現在では国内70%のシェアを築いている。このほか、多様な化学薬品、印刷関連材料、あるいはプラズマエッチング装置、印刷機器などの機器・装置開発でも実績を積み重ねている。
製品の紹介をする前に、
ほんの少々半導体の話
当社は、機能性高分子材料などの化学メーカー。当社の製品の説明をするには、その前にどうしても半導体の話が必要になってしまう。
4メガビットとか、16メガビットとか、LSIやICは集積度がよく話題になる。1つのチップの中に盛り込まれた回路の容量のことで、高集積化の歴史が半導体技術の進化史でもある。高集積化が進めば、それだけ小さくて大容量の半導体が安くできるようになるわけだ。
小さいチップの中に膨大な電子回路をつくるには、回路の線の幅、線と線の隙間も小さくする必要がある。現在主流になっている4メガビットDRAMなら、ウエハーの上に描かれる電子回路の幅はおよそ0.9ミクロン。回路は写真技術を応用して焼き込むのだが、このときウエハーにフォトレジストと呼ばれる感光材を塗布する。これは光や放射線を照射した部分の構造を変える高分子材料。フォトレジストを塗布したウエハーに回路パターンを書いたマスクをのせ、光をあててウエハー上に微細な回路を描くという仕組みである。そしてこのフォトレジストが、TOKの主要製品。半導体は多分野の技術が結集されている世界であり、進化には化学の力も必要なのである。
このほか、酸化ケイ素を主成分とする被膜形成用塗布液、半導体製造用の高濃度ホウ素拡散剤、有機系薄利剤などの関連薬品にも着手。また印刷用の感光性版、PS版、あるいは各産業分野で利用される無機系化学薬品類から有機系化学薬品類までの高純度化学薬品など、600種類以上の製品を手がけている。
積極的な研究開発によって、
常に“次の技術”を追求
半導体技術は急ピッチで進化を続けている。集積度を高めていくためには、当然フォトレジストの進化も必要。当社では“研究開発に100点はなし”という徹底したポリシーを貫き、新しい技術の研究開発に積極的に取り組んでいる。
当社の研究開発には、ユーザーのニーズをもとに開発や改良を行う製品開発と、長期的な視点で設定したテーマを追求する研究所主体の活動とがある。当社の特徴になっているのが、セールスエンジニア、製造技術者、開発技術者が一体となった体制である。セールスエンジニアが収集した生の情報を、技術部門にインプットすると同時に、3部門間での定期的な会議を行っている。部門の垣根を超えてお互いの情報やノウハウを結集し、研究開発に生かしていこうという考えである。
また、ユーザーとの技術会議をはじめ、各大学との交流、各種研究機関、民間企業との技術交流、共同研究・共同開発も積極的に進めている。さらに1980年からはセミナーを主催。半導体関連業界の技術者を特別講師として招いているほか、当社の技術者も研究発表を行っており、半導体プロセスに関する最先端技術の交流の場となっている。
こうした研究開発体制のもと、すでに64メガビットDRAMの0.25ミクロンという微細な回路を焼き付けるフォトレジストも完成させている。このほか、液晶ディスプレイ用材料などをはじめ、機能性高分子材料の基礎研究をベースに新しい技術に対応した製品を開発。バイオケミカルマイクロマシンなど次世代の研究開発用の材料の提供も進めていく。
当社は、半導体製造装置や
印刷機器のメーカーでもある
冒頭で“化学の会社”と紹介したが、実は当社の事業領域は“化学”という枠を大きく超え、機器や装置にまで広がっている。
たとえば微細な回路パターンをつくることを目的にフォトレジストなどの感光材を進化させていくと、実際の加工にも高度な技術レベルが要求されるようになってくる。そこで、材料の可能性を最大限に生かすために、半導体製造装置をはじめとする機器・装置の開発・製造にも取り組み始めたのがきっかけとなった。とくに当社の場合、材料の特性を熟知しているだけに、これまで蓄積してきたノウハウを機器・装置にも生かし、ユーザーのニーズに的確に応えた製品をオーダーメイドで開発・製造している。
一例をあげると、高真空条件のもとで超精密のエッチングを効率的に行う「プラズマエッチング装置」、レジストの耐熱性を大幅に向上させる「真空紫外線硬化装置」、あるいは液晶ディスプレイを製造していくための「大型角基板コーター一貫ライン」などがある。当社では機器・装置関連でも活発な研究開発を進めており、次世代半導体製造装置の開発もターゲットにおいている。このほか、全自動POP高速製版機といった印刷分野にも進出し、印刷機器メーカーとしても着実に実績を積み重ねている。
このようにケミカル分野とエレクトロニクス分野にまたがって幅広い技術開発に取り組む当社には、化学から機械、電機・電子などまで、さまざまな出身分野の技術者が実力を発揮するフィールドが広がっているのである。