第2創業期を迎え、
技術提案型の事業を展開

技術力をもとに、
社会に新しい提案をする企業へ

 鉄道は社会に欠かせない存在として、きわめて重要な位置づけにあります。当社は、こうした鉄道の安全運行をバックアップする各種の機器・システムを主体に事業を展開してきた技術集団です。いうまでもなく鉄道は安全性が重視される分野であり、機器・システム自体にハイレベルの信頼性が求められています。当社では、異常が生じても常に安全なほうへと導き、事故を未然に防いでいく“フェイル・セーフ”という開発ポリシーを貫き、ニーズを満たす製品を数多く送り出してきました。同時に、ハード・ソフト両面にわたって、二重三重の安全性を実現する機器・システムの技術ノウハウを蓄積しています。
 そして、1993年の設立50周年を機に“第2の創業期”としてとらえ、これまで培ってきた技術ノウハウをもとに新たな展開をめざしています。50周年にあたって“C&I(Creativity & Innovation)”との企業コンセプトを策定し、“21世紀への創造と変革”というテーマのもとに続々と新しい試みを繰り広げています。その一つは、鉄道分野に新しい技術を取り入れていくことです。人工衛星による通信システムを列車の運行管理などに応用したり、センサー技術、あるいはマルチメディアのような未来技術にも目を向けています。そしてもう一つが、既存の技術を応用した新しい製品分野の開拓です。すでに都庁防災センターに納入された情報通信システム、自治体向けの違法駐車監視システム、あるいはフェンシング競技用の「デリカFI」といったユニークなものまで、数々の開発活動が実を結んでいます。高度な技術力をベースに、社会に対して新しい提案をしていく。そんな技術提案型企業としての展開をめざしているのです。

幅広い用途に利用される
ITV監視装置の設計を担当

 入社以来、設計部の第一課に所属しています。鉄道関連を担当しているのが二課で、一課はそれ以外の製品分野の設計を行っています。私自身は主に、ITV(工業用TV)監視装置を担当しています。これはカメラで映像を取り込んで、また音声なども扱いながら、集中的に監視するための装置です。主に防犯や防災を目的として、少ない人数で広い場所・離れた場所を監視するために使われることが多いですね。私が手がけた中では、東京湾横断橋の工事現場向けのもの、地方自治体向けの交差点や駅前の違法駐車を監視するものなどがあります。このほか、都庁の防災センターにも納入されていますし、利根川の河口では防災用、航門を通過する船舶と監視室との連絡などにも活用されています。アイデア次第でいろいろ用途が広がる製品なのです。

ユーザーのニーズに合わせて、
一つ一つの製品を設計していく

 ITV監視装置では標準的な仕様はありますが、カメラの台数やその動きの制御などは、それぞれのユーザーによってニーズは変わってきます。一つのハードウェアであらゆるユーザーのニーズを満たすことは難しく、細かい要望に合わせてユーザーごとに制御回路や筺体を設計していくことになります。だいたい平均的には受注から納品まで1カ月ぐらいの納期になっています。その際も仕様の打ち合わせから設計、材料・部品の手配、製造部門との打ち合わせ、そして検査にいたるまで、すべてのプロセスを自分で見ていくことができます。設計なら設計だけ、製造技術なら製造技術だけというように技術者の仕事が細分化されていないので、一連のプロセスを経て実際に製品が完成し、ちゃんと動作したときの喜びは大きいですね。

入社早々、
いきなり新製品開発に参加

 私の学生時代の専攻は情報処理。ソフトウェア会社で仕事をするのもいいけれど、メーカーでもコンピュータの知識が生かせるのでは、と考えて入社しました。入社して配属されたのは開発室。ここには、踏切制御機器、記録器、ソフトウェア全般という3つのグループがあり、ソフト関係の開発・設計を担当している技術者もいるのです。そして入社早々、継電連動機動作記憶装置の「YR型」という新製品開発プロジェクトに参加しました。これは駅構内を走る列車の状況や信号ポイントなどを記憶しておく装置。ここで収集したデータが、異常時に役立てられていきます。「YR型」では従来の6倍近い記憶容量を持つようになり、電車の発着の最も多いJR品川駅でも、3日分以上の記憶ができるようになっています。

パソコン側の
ソフトウェア開発を担当

「YR型」では装置本体とパソコンが接続され、装置が記憶してあるデータを取り込んで、タイムチャート表示などに活用できるようになっています。私が担当したのはパソコン側のソフトです。プログラムの仕様面で重視したのは、キー操作がシンプルで優しく、画面表示なども極力わかりやすくしていくことです。そもそも実際のユーザーとなる各駅の職員の人たちは、コンピュータの専門家ではありませんし、中にはキーボードが苦手な人もいます。そこで、使うキーを減らして、なるべく一つのキーである程度の操作ができるような配慮を払いました。「YR型」は今後、多くの駅に導入される予定です。私自身は今回の開発では研修と実戦を兼ねたような感じだったので、戦力として頑張れるように自分の力を高めていきたいですね。

今まで手がけていない
全く新しい製品を創作

 創作部は私がちょうど就職活動をしていた1993年に新設されたセクション。開発室が既存製品の新製品開発を担当しているのに対して、創作部はユニークなその名前の通り、全く新しいものや特殊な製品を試作し、創り上げていくことを目的にしています。交通関係では、踏切警報ランプや信号のLED化、筺体のFRP化などを手がけています。一方、プライスサインのような新しい製品にも積極的に取り組んでいます。これは、サービスステーションでガソリンなどの価格を表示しているもの。電光掲示板よりもコスト的に安いため、数多くの店舗で導入されています。私自身は、いくつかの商品が順番に表示できるというプライスサインのメリットを生かし、タバコ店やファーストフード店向けに応用した製品の開発に取り組んでいます。

新しい技術を
積極的に吸収していきたい

 創作部は誕生してから日も浅いですし、まだまだこれから活動の内容を充実させていくセクションなんです。新分野・新技術の探求という役割もありますし、それによって新しい事業の柱が生まれる可能性も秘めているわけです。ですから、日頃から新しい技術に対してアンテナを張っておく必要がありますね。たとえば“エレクトロニクスショー”は、2班に分けて技術者全員が見に行きました。実際に自分の目で確かめてみると、「こんな製品もあるのか」という具合に勉強にもなりますし、また実際に応用できそうな技術に触れることもできます。このほか、社外で行われているセミナーにも積極的に技術者を派遣していて、これまでに「デジタル回路・論理回路」の講習を2回受けました。技術を吸収する環境は充実していますね。

まず社員が意欲を持って仕事に取り組むこと。
それが会社の将来の切り開く力になる。
そう考え、社員一人一人が仕事に充実感を感じられる
環境づくりを重視している。

新しい技術や製品を開発し、会社の将来を拓いていくのは一人一人の社員。そのため、まず社員が意欲や充実感をもって仕事に取り組める環境づくりを進めている。たとえば開発・設計部門では、2〜3名のプロジェクトチーム制を実施し、チームに大きな権限を与えている。企画から設計、評価、製品の完成まで、一連のプロセスにタッチできるのである。また、社員からの発明考案募集も行っている。