ジーンズカジュアル販売の理想を求めて
独自のビジネススタイルを確立し、
店頭公開企業へと成長。

 当社は東京・神奈川・埼玉・千葉に52のジーンズカジュアル専門店を展開。創業以来、次々と業界の常識を打ち破り、「完全買い取り」の仕入れをはじめ、独自のビジネススタイルを確立してきました。それによりブランド商品のプライスダウンを可能にし、若年層から根強い支持を獲得。店頭公開企業へと成長を遂げています。また、堅実経営を貫き、経常利益10%という業界でもトップレベルの高収益体質を築いています。

それは“理想”を求めて始まった

 東京圏でジーンズカジュアルの専門店を展開する当社。今や、ブランド品を低価格で提供する店舗として、若年層から根強い支持を受けている。実は、その背景には理想のジーンズカジュアル販売をめざし、業界の常識を次々と打ち破りながら築いてきた独自のビジネススタイルが存在している。その中心は、「完全買い取り・現金決済」の仕入れ。それまでジーンズカジュアルは、メーカーの委託で商品を販売する「委託販売」が常識だった。売れ残った商品をメーカーに返品できるのだが、安全な分だけ仕入値は高い。すると販売価格も高くなってしまう。そこで、商品を完全に買い取る方式を採用。それも手形ではなく、メーカーにメリットの多い現金取引によって、商品を低価格で仕入れ、プライスダウンを実現しているのである。

“旬”の商品を仕入れて売り切る

 完全買い取り方式では、売れ残り商品を極力なくさなければいけない。とくにカジュアルは流行の移り変わりが激しいため、売れる商品、話題の商品をいち早く仕入れて、“旬”のうちに売り切っていく必要がある。そこで1週間ごとに売れ筋を見極め、売れ行きを判断し、週単位で細かく商品の発注を出している。ジーンズの商品回転率は2回というのが一般的だが、当社では14回という高い水準にあり、仕入れて売り切るサイクルの速さを示している。また、システム化も積極的に行い、86年からは全店舗にPOSシステムを導入。売れ筋情報をリアルタイムでつかんでいる。さらに、94年3月からは「商品発注管理システム」を導入。店頭の在庫管理を徹底すると同時に、仕入先にオンラインで発注できる体制を整えている。

その地域でトップの店舗をめざす

 当社の店舗は現在52カ所。78年、世田谷に第1号店を開設して以来、東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県に出店してきた。立地的にはほぼ国道16号線の円内だ。その基本戦略は、価格や品質はもちろん、豊富な品揃えと集客力をもとに地域一番店をめざしていくことである。繁華街の中心を避けて、同じ費用で売り場面積の大きな店舗を開設し、品揃えを充実。売上比率では、シャツやセーターなどのトップスが49%を占め、ジーンズなどのボトムは41%。さらに小物雑貨を加え、ジーンズを中心にカジュアルファッションをトータルに提供する店舗づくりを進めてきた。そして、年9回のバーゲンを軸にした販売戦略を展開し、中心街なみの集客を実現。女性客も30%を占め、集客数は1ヶ月で400万人近くにまで達している。

95年7月、店頭公開を果たす

 店舗第1号店を開設してから今年で19年目。現在では、国内のメンズカジュアル業界では第5位のマーケットシェアを持ち、ジーンズカジュアル業界に限ると第3位のポジショニングを築いている。さらに出店エリアになっている東京圏でいうと、上位10社の中で第1位の29%のシェアを獲得している(いずれも数字は自社調べ)。その間、カジュアルファッション市場の急拡大というフォローウインドウを受けながらも、規模の拡大だけにとらわれるのではなく、収益性を重視した堅実な経営を展開。5年前からは、上場企業にふさわしい社内体制づくりをはじめとして、株式公開に向けた準備を着々と進めてきた。そして95年7月には、店頭市場に株式を公開。パブリックカンパニーへの仲間入りを果たしたのである。

経常利益10%の高収益体質を持続

 ジーンズ世代の成長、また余暇時間の拡大によって、カジュアルファッションのマーケットは今後も急ピッチで拡大していくことが予測されている。当社では「2003年に100店舗、売上高400億円、経常利益40億円の達成」という株式公開後の中期経営ビジョンを策定。目標は当初の計画よりも早く達成できる見込みで、現在は次のターゲットを模索中だ。ただし、成長を急いで、店舗展開を加速させていく考えはない。これからも年間7〜8店舗という新規出店ペースを守り、むしろ企業としての中身の充実に重点を置いていく。現在、当社では業界内でも高水準の経常利益10%を実現している。こうした高収益体質の持続を重視し、年間10%ずつの売上拡大を図るなど、創業以来進めてきた堅実経営を貫いていく。

店舗の大型化で、収益をアップ

 中身を充実させていくうえで欠かせないのが、各店舗の強化である。最近では、駅周辺や繁華街などにあるビルへも積極的に出店している。95年には、川崎駅ビル「川崎ビー」に大型の新規店舗をオープンし、初めて駅ビルへの出店を果たした。また、これまでの店舗の平均売り場面積が約260㎡だったのに対して、最近オープンした新規店舗の平均はおよそ330㎡。この数字からもわかるように、店舗のスケールアップを図っている。このほか、百貨店への出店や、東京圏以外の地域への出店、あるいは都心のターミナル地域に1000㎡規模の大型店舗を開設していく構想もあり、品揃えをさらに充実させた店舗戦略を展開していく。これと並行して既存店の大型化も進め、1店1店の売上高と収益性をアップさせていく。

トライ&エラーを
繰り返して成長

 当社のこれまでの歴史。それは、トライ&エラーの連続とも言い換えられます。いいと思ったらトライしてみる。成功すれば、徹底的に続ける。見込み違いであれば、思い切って撤退する。そんなことを何度も繰り返しながら、理想のスタイルを独自につくりあげてきたわけです。だから、今までには失敗も数多く経験していますね。たとえば、一部の店舗で子供服を取り扱ったこともあります。しかし、本格的なジーンズカジュアルとは相性が悪く、結果として子供服からは撤退しました。また、6年前には原宿に直輸入商品を扱う実験店「JM・International」を出しましたが、残念ながら今はありません。それでも、これらのトライの中で多くのことを学びましたし、貴重な経験となって生かされています。トライ&エラーこそ、当社らしさなんです。

これからのトライアル

 当社らしさといえば、株式を公開したときも記念式典をやらなかったんです。これは各店舗のスタッフが一斉に集まるのがむずかしかったためです。そのかわり“店頭公開記念セール”を開催し、社員には“大入り袋”を出しました。このあたりも、ユニークな会社だとよくいわれましたね。
 これからのトライとしては、それがどこになるかは決まっていませんが、九州や関西、東海など、東京圏以外のエリアにも店舗を出していこうと考えています。実は、86年に横浜店を出した当時には、本拠地の新宿から1時間半も離れた地区でやっていけるか不安もあったんです。そのために社員のツアーを組んでアメリカに勉強しに行ったほどで、その頃に比べれば企業基盤もしっかりしていますし、最近のトライアルには自信を持って取り組んでいます。

若手にどんどん
仕事を任せたい

 当社の平均年齢は、24.9歳です。数字はともかく、若々しいフレッシュな風土を持続していきたいと考えています。というのも、カジュアルファッションの会社ですし、お客様の対象も15〜23歳がメイン。社員には若い感性を持ち続けてほしいのです。そして若手の社員には、もっともっと権限委譲をしていこうと思っています。第一期生で入社した社員が入社8年を経過し、年齢的には30歳になろうとしています。課長クラスはだいたい30代半ばですから、あと3〜4年もすれば第一期生たちが会社を動かす中心戦力になります。先日は日曜出勤して課長研修を実施しましたし、課長クラスの研修にも力を入れていきます。ただ、本部のスタッフは日曜が休日ですし、カジュアルの会社が社員の余暇を奪ってはいけないので、これからは平日に行うつもりです。