当社の歴史は、
数々の第一号機の開発から
始まった
世の中には『第一号機』と呼ばれるものが必ず存在する。テレビにしろ、パソコンにしろ、それを開発した技術者がいて、初めてつくりあげられた原型がある。当社エンジニアリングは創業当初から、そうした第一号機や原型をつくりあげることに明け暮れていた会社だ。小売店のPOSシステムも、その原型は同社が七八年にOEM開発した『データ処理システム』であった。また、八三年には銀行の『カード振込機』の第一号製品をコンピュータメーカーとともに開発。七七年、農協向けに開発された国内初の電子計量システム『柑橘類選果評価装置』なども同社の製品であり、開発例は非常に多い。
こうした話題から切り出したのは、同社が根底に持っている風土をまず紹介しておきたかったからである。開拓精神や起業家精神に満ちた集団であることを頭において、読み進んでいってほしい。
アミューズメント分野の
第一号製品の一つが、
事業の柱を築き上げる
現在の同社について企業研究をすると、アミューズメント施設、とりわけパチンコ店向けの機器・システムで豊富な実績を持つ会社という情報が得られるはずだ。事実、『景品管理システム』は、国内五〇%という圧倒的なシェアを築いている。九五年七月にオープンした一大アミューズメントスポットにも、同社から一括でホールコンピュータや各種の機器・システムが導入されたほどである。
ただ、アミューズメント産業向けの製品も、実は前述した『第一号機』の中の一つに過ぎなかった。景品交換POSに始まり、その後は計数機や会員カードシステム、データキャプテン、ホール経営の意思決定をサポートする総合システム・ホールコンピュータまで、パチンコ店のあらゆる情報化や経営改善のための製品を次々と送り出してきたのである。
こうして事業の大きな柱をでき、またアミューズメント産業の成長にも伴って、同社の業績は急拡大した。九三年には店頭公開を果たし、九七年には二部上場をめざしている。九六年三月期は売上高一六〇億円を達成する見込みで、これは前年比三二%アップの数字となる。経常利益は五一%の伸びを見込んでいるというから、同社の勢いはまだまだ衰えそうにない。
今年は『新規事業元年』。
新マーケットや新製品に、
積極的に取り組んでいく
同社では、九六年を『新規事業元年』と位置づけ、社内では『昔に戻ろう』というスローガンを打ち出している。『昔に戻ろう』というのは、創業当初のように業種を問わず様々な世界に向けて、画期的な製品を開発していこうという意味である。いわば、アミューズメント産業向けの製品で、タテに伸ばしてきた業容を、今度はさらにヨコにも広げていく考えなのである。今後の構想について、同社の松波廣和社長に聞いてみた。
「アミューズメント産業向けの事業だけを見ても、まだまだ当社のマーケットは急ピッチで拡大していきます。今までになかった全く新しい製品も近くマーケットに送り出す予定ですし、今後も好調に伸びていくと思います。しかし、マーケットの勢いが失速を始めた時に、次の手を打ったのでは遅い。今から第二、第三の柱を育てていこうという考えなのです」という。
基本的には、ニッチな市場を見出していく方向をめざしていく。新規事業として具体的にどういった業界を想定しているかは公表できないが、「これから、当社の動きが激しくなることは確か」(社長)だという。
ソリューションに徹する
独自の開発方針が
同社の強さを築き上げた
同社の技術で優れているのは、ユーザーの要望を満たすアプリケーションを開発する点である。
「当社は、基礎技術の研究をしているわけではなくて、優秀なデバイスや技術をうまくコーディネイトして新製品を創出しているのです。それも、技術者がすごいと思う製品ではなくて、お客様本意の価値ある製品をつくることに徹しています。売れる製品が良い製品なんです。アミューズメント産業向けの製品も、お客様のニーズを満たしていて、買ってもらえる製品だったから、事業の柱に育ったのです」(社長)という。
新規事業元年を推進する中で同社が強みになるのは、アプリケーションを開発する力、すなわちトータルソリューションに優れていることだろう。技術的な面でいえば、専用ハードを開発するハードやメカの技術から、ソフトウエア、ホールLANなどのネットワーク技術まで、幅広い技術を蓄積している。また、自社製品を送り出すマーケティング力や商品企画力、生産や物流の拠点、そして全国○カ所の営業拠点までを有している。社内には技術スタッフのほか、最前線で営業や提案業務を行う営業社員、サポートのための営業技術などまで、ユーザーに受け入れられるアプリケーションを開発し、新製品として事業を展開する基盤を持ちあわせているのである。
複合的な技術の蓄積し、
社内環境をさらに高める。
将来に向けての布石
将来に向けての地固めにも余念がない。とくに技術提携や業務提携に積極的で、今年度からは海外企業との技術交流によって通信関連の技術を吸収していく。ほかにも国内外の技術企業と交流を図り、情報の収集や自社内にない技術の吸収を進めていく計画だという。
このほか、九三年には開発拠点として技術センターを開設。現在は第二技術センターも建設中である。また、東京・府中には研修センターが完成し、研修環境も整備された。一方、分社化といった大胆な展開もあり得るという。要は「若手が寝食を忘れて、仕事に取り組めるような環境でなければならない」(社長)と考えているのである。今まで以上に、起業家精神が発揮できる時を迎えているといえるだろう。