在来工法No1の実績。
「木」の良さを生かし切る商品と営業。
山林事業、木材・建材事業、海外事業など、「木」に関するマーケットの川上から川下までを手がける当社。総合力を生かした住宅事業は、年間一万棟という在来工法ナンバー1の施工実績を築いている。品質の高さで評価されるリーディングカンパニーが、今後どのように事業を展開していくのだろうか。その基本戦略を紹介しよう。
在来工法No1の
施工実績
在来工法を進化させた木造軸組工法をもとに、質の高い住宅を供給し続けている。95年度の施工は1万800棟に達する見込みで、在来工法の世界でトップの実績を堅持している。
3階建て住宅と
システム住宅
93年から都市部の貴重な土地資源を生かした都市型3階建て住宅「夢3階」に着手。また96年からは、自由設計の木造住宅の工場生産率を高めた「システム住宅」にも取り組んでいく。
コンサルティング
重視の営業活動
当社の家は90%がフリープラン。営業活動では、お客様が抱いているイメージをもとに、具体的な形のプランにしていくことが大切。コンサルティング能力が発揮できる仕事である。
山林事業をはじめ、
木のマーケットの川上から川下にいたるまで幅広い事業を展開
一万八〇〇棟。これは当社が1年間に施工した住宅の数である。もちろん、在来の木造軸組工法という分野では、第1位の数字になる。こうした実績の要因は「当社の家」のクオリティに尽きるが、そのクオリティは当社ならではの独自の事業展開から実現されているものといえる。
たとえば九五年度の売上高六三三二億円のうち、住宅事業は半分の三一二五億円。あとは、山林経営や木材・建材事業といったビジネスが占めている。当社の今から三〇〇年以上も前の元禄四(一九六一)年に創業し、明治時代から大規模な植林に着手してきた。今では約4万ヘクタールの山林を所有しており、これは国土の千分の1の面積になる。このほか、木材・建材の輸入・販売・生産・加工も手がけ、原木や製材品から窯業建材、金属建材、住宅設備機器まで多彩な製品を扱っている。また、新しい素材や製品の研究開発や、海外事業にも積極的だ。とくに海外では3つの大陸にまたがる各地で事業を展開し、木材・建材の輸入でトップクラスの実績を築いている。こうした「木」を核とする多彩な事業基盤のもと、一九七〇年から本格的に住宅事業に進出してきたわけで、良質の材料を豊富に使った質の高い住宅を提供する仕組みはここにある。「木」のマーケットの川上から川下までをトータルに取り組んでいることが、当社の最大の強みなのである。
自由設計の良質な住宅を、
システム化した体制で供給する。その基本路線上に誕生した新商品
在来工法自体は千年以上の伝統を持つが、当社はそれをそのまま受け継いでいるわけではない。そもそも「木造軸組工法」とは、在来工法のムリ・ムラ・ムダを省いたもので、当社が独自に名付けたネーミングだ。当社では建材や部材の加工技術、施工技術、構造、設計や積算まで、さまざまな技術を徹底的に追求。CADデータを部材のプレカットに活用するCAMも含めて、合理化・近代化したシステムを確立してきたのである。
そして最近は、新しい商品、新しい事業にも積極的に取り組んでいる。九三年からは、都市部の土地の有効活用のニーズに応えるため、「夢3階」という都市型3階建て住宅の事業もスタート。2×4、重量鉄骨、鉄筋コンクリート構造と木造軸組の混合構造まで、3種類の3階建て住宅を供給している。
また、九五年にはシステム住宅事業への本格進出を打ち出した。これは自由設計された木造軸組住宅をいくつかのユニットに分割して、それを工場で生産。そして建設現場へと搬入して最終的に完成させるというものだ。工事現場から工場に生産場所を移しただけで、間取りも自由。生産も一邸ごとに行う。木造注文住宅をシステム化した体制で供給するという基本路線の延長線上にあり、いわゆるユニット住宅とは完全に一線を画している。しかも、低価格化、大工職の人材不足の解消、工事車両の削減や工事現場の騒音削減などにも結びつくだけに、画期的な近未来住宅といっていいだろう。すでに群馬県館林市ではシステム住宅の専用工場を建設中で、5年後には一五〇〇棟の施工をめざしていくというから、同社の今後の事業戦略の中で重要な位置づけになっていくに違いない。
コンサルティングを
基本にした質の高い営業活動
社員の仕事内容にも目を向けてみよう。当社では、3〜5人でのチーム営業を基本にし、チーム単位で1人のお客様に対応。お客様ごとに最も適性のある営業担当が決まり、設計や工事部門とも連携を図りながら、プランニングから工事・アフターフォローまでを見ていく。すべてにわたってより完璧な対応ができるように、チーム全体で担当者をフォローし合う体制になっているのだ。
こうした営業体制を敷いているのは、フリープランの住宅が九割に達していることにも起因している。フリープランであるため、営業活動はゼロから1棟1棟をつくりあげていくというスタイルになる。ただし普通は、お客様の要望は具体的な形としては出てこない。「こんな感じ」という抽象的なイメージであることのほうが圧倒的に多い。漠然とした要望を受けとめ、イメージから実際の住宅へと導いていく。そこには、お客様の立場に立ってじっくりと取り組む姿勢、そして最適なプランをつくり出すコンサルティング能力が欠かせない要素となってくる。システムは近代化できても、コンサルティングは社員にしかできない。コンサルティングも大切な商品であり、当社の家のブランド力は営業活動の質にも支えられているのである。じっくり時間をかけて社員を育成し、全体としてハイレベルな人材力を形成することで、同社の事業戦略が力強く進んでいくのである。