世界最高速の技術をベースに、
統合的なSIを展開

世界最高速のサーバ&ワークステーションに代表される六四ビット環境の技術力。M社、C社との業務提携に見られるコネクティビティ。日本DECは数多くのニュースを生み出しながら、オープン・コンピューティングという大きな潮流の中で、新しい時代のコンピュータメーカのあるべき姿を示唆している。

好調なビジネスを
展開中ですね

 一九九二年に世界最高速の商品を発表して以来、各方面のユーザに六四ビット・コンピューティング環境を提供しています。このチップを搭載したサーバ&ワークステーションは、九六年二月の時点で世界に一七万台を出荷。中でも最上位機種のシリーズは、発売から一年で国内に一〇〇台以上、全世界には一四〇〇台を納入しています。
 また、最近ではパソコン関連でも積極的な展開を図っています。九四年に発売したノートブックパソコンは厚さ三〇・五ミリで、世界一の薄さを実現しましたし、高速CPUを搭載したシリーズ、PCサーバシリーズなども順調な伸びを示しています。
 確かに当社は技術力や製品力をベースにした会社ではあるのですが、私としては、サービスが当社の売上のほぼ半分を占めていることを強調したいですね。これは何を意味しているのかというと、それだけお客様が実際にコンピュータを活用している場面を重視し、システムインテグレーションに力を入れているということなのです。他社のマシンも含めた統合的なインテグレーションを行っていますし、当社の製品が導入されていないお客様のシステムサポートも行っています。こうした事業展開がお客様から評価をいただき、三年連続の増収へと結びつけています。

創業以来の
設計思想がありますね

 コンピュータシステムは、今でこそ分散処理方式が主流になっていますが、それ以前は長い間、大型機による集中処理の道を歩んできました。米国社が設立された一九五七年当時も、コンピュータといえば大型で、高価で、専門家のための製品でしかありませんでした。ところが、創業者のケン・オルセンは全く逆に、『コンピュータはタイプライタのように実用的で身近な道具であるべきだ』という考えを持っていまして、当初から何台かのミニコンでリアルタイムネットワークを構成することをめざしたのです。そうした設計思想のもと、当社が最初に開発した機種は、小型で、使いやすく、価格も他社製品の一〇分の一ほどでした。はじめに当社の製品を支持してくれたのは、研究者や技術者といった人たちで、まずは研究用として利用され始めたのです。その後、ビジネス分野へと活動領域を広げてきたわけです。
 現在は、『オープン・クライアント/サーバ・ソリューション』という概念を打ち出していますが、私たちは伝統的に、分散処理やマルチプラットフォームの統合を企業コンセプトにしてきました。オープンな環境づくりが求められている今、まさにコンピュータの潮流と私たちの技術とが合致してきたわけです。

今後の経営計画はどのようになっていますか

 現在は、九五年一一月に策定した三カ年の中期経営計画を推進中です。その中核は、①Best︱in︱Class挑戦(High Marcket Share)、②成長性・生産性の向上(High Profitability)、③「つながり」重視の経営(High Organization Quality)という3つの経営方針から成ります。主要な分野でトップとなり、収益性を強化し、お客様や株主、ビジネス・パートナなどとの関係を充実させていこうという意味です。
 「つながり」の部分の好例が、有力企業とのパートナーシップです。九五年八月には、米国社と米国M社とが業務提携し、その三週間後には日本法人同士の提携も実現しました。さらに三カ月後には、米国社と米国C社とが、世界の企業ユーザに向けたサービス・技術支援に関する提携を結んでいます。
 今や複数のメーカの製品によってコンピュータシステムが構成されている時代です。自社製品のことだけを考えるのではなく、強みを持った企業が協調し、相互補完することで、お客様のメリットが大きくなるはずです。コネクティビティこそ、今、コンピュータ業界に求められていることなのです。
 また、事業戦略面では、独自にテーマを掲げています。企業ユーザのもとには、最近の主流のクライアント/サーバシステムと、以前から取り組んできた大型コンピュータのシステムが存在しています。言い換えれば、各セクション内の業務効率化のための日常系システムと、膨大な処理を行う基幹系のシステムという言葉になるでしょう。問題は、これらはが別々に構築され、情報が違う形式で散在しているということです。当社では、『企業ユーザーの情報システムの統合』をテーマに、二つのシステム間で情報を互いに活用できる関連関係を築いていきます。



最後に、風土について
お聞かせください

 当社が創業以来貫いている理念は、『HONESTY』です。これは、ユーザの真の要望をとらえ、誠実に応えていこうというものですが、対ユーザに限らず、社内にもこの姿勢が浸透しています。たとえば、入社後、何年か仕事をすると、自分が本当に取り組みたい分野が見えてくると思います。社員はそれを会社にアピールし、また会社も社員が希望に沿った仕事につけるように努めています。さらに、福利厚生面では、病気などで療養する際に、最高五年間まで社員の身分と所得を補償するという制度も設けています。何よりも、人を大切に考えるのが当社の風土なのです。
 このほか、米創業者は社長でありながら、自分専用の駐車場を持っていなかったというエピソードもあります。社長も一般社員も区別しないで、早く出社した順にビルに近い場所に止めていたのです。そんな肩書きを意識しない風土は、日本にも受け継がれていますね。
 私は、九五年の社長就任以来、毎年、『ストラテジック・ディレクション』というものを行っています。これは、東京、大阪を中心に各拠点をまわって、全社員の前でビジョンを話すというものです。質疑応答の時間も設けていまして、中には非常に手厳しい質問をしてくる若手社員もいますよ(笑)。これからもずっと続けて、トップの顔が見える会社、トップまでの距離が近い会社であり続けたいと考えています。

テクニカルサポート
は、新技術や新製品
に最初に接する仕事

 マルチベンダーサービス事業本部テクニカルサポート課。ここは、全国のサービス部門から寄せられるトラブルへの対応、サービスなどでの米国社のエンジニアとの連絡、新製品に対応した社員教育などを主な業務にしている。その中で、彼は、UNIXに関するもの全般を担当している。
 「カスタマーエンジニアが最前線なら、私たちは最後部に位置します。サービス部門が解決できないトラブルに出くわしたときに、私たちのところに相談や質問が寄せられてくるわけです。まったく原因が不可解というようなトラブルが多いですね」
 現在は、システム構成が複雑なので、情報だけでどこに真の問題があるのか判断するのが難しい。当社では世界中でのトラブルやその解決策の情報がデータベースとして蓄積されている。まず、同じような問題がなかったか、データベースで検索する。ある程度の見極めがつけばあとは早い。もし解決策が見つからなければ、米国社の開発部門に問い合わせる。そうして、さらにデータベースに情報が蓄積されていく。
 また、新製品が出たときの社員教育も重要である。米国社などに赴いて新製品のトレーニングを受け、日本に戻ってきたらそれを社内の教育担当者や、新製品に関わる担当エンジニアなどに対してフィードバックする。内片自身は、これまで三回の米国出張を経験している。新製品のトレーニング関連での出張が二回、あとは幕張でのデータベースショーに出展したシステムの構築だった。
 「今の仕事の面白味は、新製品や新技術と一番最初に接するセクションだということですね。それに最新の情報も収集し、活用することができます。世界の技術動向をすべて把握できるわけです」

リスクマネジメント
という、金融におけ
る最先端システム

 「優れたコンピュータ技術はもちろん、その上に豊富なユーザの業務知識があって初めてできる仕事ですね」
 彼女は、システムインテグレーションについてそう話す。彼が今、担当しているのは、金融業界に対するリスクヘッジのソルーションだ。
 「バブル崩壊後、いわゆるリスク管理の重要性が叫ばれるようになりました。日本にはこの手のパッケージはないんですが、かといって、一からシステムをつくり上げていくと、どうしても二〜三年はかかってしまう。そこで、アメリカの優秀なパッケージをもとに、ユーザと綿密に話し合いながら日本の金融の仕組みに合った形に、ユーザ個々に適切な形にして、提供していくわけです」
 金融の最先端のシステムであるだけに、一つ一つのプロジェクトは長い。まず、パッケージの優秀性をユーザに理解してもらった上で、要求仕様を固める。OKが出て、ようやくプロジェクトが立ち上がる。そして、米国社と日本社のエンジニアが一体となって開発を進めていく。彼自身も「九六年はもう三カ月に一〜二回ぐらい」アメリカに出張していたという。
 「リスク管理のアプリケーションは導入後すぐに効果が出るものではないんです。そこで得られた結果は、一〜二年後の経営陣の経営方針策定を支援する資料になるわけです。経営を支援するシステムだけに、各ユーザの経営方針に適合したシステムでなければなりません。そのため、ユーザの業務や経営について精通していなければならないのです。その点、当社は、ディーリングサポートシステムをはじめ、金融関係の幅広いシステムを構築してきた実績があり、これまでに蓄積した金融の業務知識がここで大いに生かされています。
 また、リスク管理は、データを即時に利用するという観点から始まっていて、高性能なハードが不可欠です。コストパフォーマンスの高いシステムがあることは、私たちにとって強みになっていますね」