21世紀・入社試験不要論。
就社でも就職でもない『試業』のBUSINESS OVERTURE。

人材にも企業にも、
『試業』期間が必要だ

 企業が入社試験を行って、応募者の中から欲しい人材を選ぶ。日本の採用・就職活動は長い間、このスタイルを基本としてきた。細かな違いはあるにせよ、応募者と企業との構図は昔も今も基本的に変わっていない。『能力主義』がうたわれている今でも、企業の制度や環境、応募者の意向を見る限り、まだまだ「就社」と言わざるを得ないのが現状だ。そうした中、他には例を見ない二一世紀型の採用(と言うと本当は間違いなのだが)活動を打ち出しているのが、MSCである。
 当社の『BUSINESS OVERTURE』システムは、入社試験で人材を選択するのではなく、まず幅広く人材を集め、三年間は仕事を『試業』してもらう。そこで、自分の適性を発見し、能力を磨いていく。もちろん、気に入れば残ってもいいのだが、『試業』以上に難しい。日本では、大学入試と卒業との難易度のバランスが問われているが、それとは全く逆の仕組みになるわけだ。入社試験をクリアすれば、ある程度社員としての身分が補償されるという、今までのシステムとは大きく違うことだけは確かである。

これが二一世紀の
企業のあるべき姿ではないだろうか

 『WORK』ではなく、『BUSINESS』という名前が付けられた点にMSCの特徴が出ている。単に会社に『勤務する』という意味ではない。当社のビジネス環境のもとで、一緒に事業に取り組む起業家を募集するといった意味が込められている。つまり、会社が社員を『試用』する期間ではなく、社員が自ら『試業』する期間なのである。
 こうしたシステムを取り入れる背景になっているのが、同社の幅広さである。当社は、『住』を中心とした一〇社の企業グループで構成される総合商社である。グループ内にはメーカー機能もあり、製造業、流通業、サービス業と、あらゆるビジネスの側面に触れられる環境が広がっている。起業家としての勉強するには絶好の企業であり、そんな利点を生かしながら、優秀な人材を見いだしていこうという考えなのだ。
 企業が競争するだけではなく、協調しながら歩む。そして、国際化・情報化が進む時代にあって、産業界全体で優秀な人材を育て、レベルアップを図っていこうという、新しい時代の企業のあり方を示唆しているのである。