自由設計と工業化。その両面の良さを生かした住宅をつくる
当社が工業化工法の路線を本格化したのは、彼が入社二年目の時だった。その後、彼はEWS研修を受け、設計事務所である関連会社にも実務と研修を兼ねて出向。工業化の推進とともに新しいノウハウを身につけてきた。
「当社の工業化とは、画一化のことではありません。フリーの個別プランを提供していくことは今までと変わらず、そのやり方が違うだけです。工業化と同時に、自由設計の良さを生かしているわけです」
工業化の要であるもとでは、設計の仕事も大きく変わっている。設計の知識を持つ設計担当が、営業担当がまとめたラフなプランを専門的にチェックし、CADデータ化し、CAMへと移していく。CADでパネル図を作成する際には、構造解析をして最適なパネルの構造を考える。
「ただし、CADに向かっている時間は、全体の1~2割程度ですね。残り8~9割は、プランのチェック、お客様との打ち合わせ、基本プランニングなど。考える仕事の割合が増えているんです」
一方、彼がお客様の要望を聞き、何もないところから設計していくケースも多い。たとえば、九六年に完成した住宅では、リビングに幅二・七メートルの大きな出窓をつけ、その先に庭が続くというプランも手がけた。また、このシステムでは、三次元の画像などをプリントアウトしてお客様に提示することができる。いろいろな視覚からの画像を見せることで、お客様はイメージを具体的に理解でき、現実とのギャップも小さくなる。当然、説得力が違ってくるのである。
そもそも彼が当社に入社したのは、住宅というお客様の姿が見える仕事がしたかったからである。彼は今その魅力を味わっている。