人間が理解できないことを数値化する。
測定の技術をもとに新市場を開拓する研究開発型企業

曖昧な感覚での判断から、数値として明確な判断へ。測定技術の進化は、確かな品質基準づくり、安全性向上などを実現し、産業や生活を大きく変えてきた。測定というフィールドに特化し、次々と画期的な製品を開発。世の中の常識を変え続ける同社の活動を紹介しよう。

精密な測定技術が、
ビジネスや生活を
大きく変えている。

 「硬さ」や「白さ」「甘さ」など、数値では表しにくい度合いがある。私たちは五感を駆使することで、何となく違いを感じ取ってはいるが、正確な数値としては把握できない。それが物質の「成分」や「状態」になると、人間の感覚ではとうてい及ばない世界になってしまう。こうした見えないもの、感じとれないものを数値で正確に把握するために活用されているのが測定器である。精密に物事を測定する技術が、これまで不可能だったことを可能にし、産業や生活を大きく変えてきたのである。
 「タンパク質○%」といった食品の成分表示も、成分計によって測定されたもの。医療の分野では、メスを入れずに患部を診断・治療することができるようになってきたが、これも物質の内部の状態を把握する技術によって支えられている。さらに、コンクリート建造物の鉄筋の配置なども、破壊せずに測定できるようになり、阪神大震災後の建物診断では大いにこの技術が活用されている。
 当社は、昭和21年の設立以来、一貫して「測る技術」を追求し続けている。社員数80名という規模ながら、これまでに200種類以上の自社製品を精力的に生み出してきた。まさに開発型の企業として、幅広い分野の測定ニーズに応えている。

高品質のお米とは、
どういう成分構成なのか。
それを明確な数値で示す。

 同社の製品群の中でメインになっている分野が、食品に関するものだ。その一つである「米」に関わる製品を紹介してみよう。
 米の成分が精密に測定できれば、「おいしい」とされる米はどういう成分構成なのかが分析できる。そうすれば、米の品質に関する明確な基準を設けられるようになる。一例を挙げると、米のタンパク質は「七%を基準にして四%に近いほど高品質」という基準がすでにあるが、これも米の成分を正確に測定する技術によって成り立っているのである。
 同社の成分分析計「AN−800」は、近赤外線の理論を応用した成分計で、わずか四〇秒あまりで米の主要な成分を測定してしまう。しかも、従来製品の五分の一程度にまでコストダウンを図ったため、生産者・流通業者も導入できるようになった。生産者も品質基準を頭に入れながら品質の管理ができるのである。そして、われわれ消費者もその測定技術の恩恵を授かっていることになる。
 このほか、白さを測定する「精米白度計」、刈取時期を教えてくれる「刈取適期判定器」、また米ばかりでなく、食品や化学品の成分測定器などまで、さまざまな角度から農業に先端技術を応用。変革期にある日本の農業を力強く支えている。

衣・食・住の
すべての分野で高まる、
測定技術のニーズ。

 今、さまざまなビジネス分野で、また日常生活の場面で、ものを正確に測るというニーズが高まってきている。同社の高度な測定技術を応用する先は、縦にも横にも大きく広がっているのである。
 例えば、企業の定期健康診断などで使われている「体脂肪計」も同社の製品の一つである。近赤外線を応用したこの製品の登場によって、近赤外線測定法という体脂肪の新しい測定法が普及。手軽に、安全に、体脂肪量の値や変化を知ることができるようになり、成人病予防をはじめとする健康管理や、スポーツ選手のトレーニングなどに大きなメリットを提供することになったのである。
 建築・土木の世界でも、今や同社の製品は必需品となりつつある。建築物のコンクリート内部の鉄筋の位置・配置、探知した鉄筋の太さまでを検知する。コンクリートやモルタル、木材の水分量・乾燥度を測定する。木材の中に隠れた釘や有刺鉄線を突き止める。建築物の外壁タイルの劣化状況を調べる。埋設されている水道管やガス管・通信ケーブルなどを地上から検知する。といった具合に、安全・確実な建設施工に大きく役立てられているわけである。阪神大震災以後、建築物の安全性がクローズアップされているが、既存の建築物の診断においても同社の製品が大いに活躍したという。
 同社の金属探知器は、縫製工場などで衣類に残ってしまった縫製針などの検知にも使われている。郵便物などに隠された金属製凶器を事前に発見するといった、防犯に関する分野でも同社の技術が生かされている。

数年がかりで、
土壌づくりから始める、
息の長い営業活動。

 同社の特徴である多種多様な自社製品。これは、営業・技術が一体となった徹底したニーズ解決型の展開から生み出されたものだ。農業関係で言えば、営業担当が丹念に地方の農協や農家を訪ね歩く。今、マーケットで必要とされているものを調査し、ニーズを満たす製品を企画する。そして、機動性豊かな技術部門が新製品を開発していく。これまでに、七〇種類の製品が営業担当の発想から生まれているという。
 また、全く新しい製品のセールスは、まず土壌づくりからスタートする。不可能なことを可能にする製品であるだけに、今までになかった公的な「規格づくり」に関わることも多い。管轄の官公庁に対して、「この製品を使うことで従来は把握できなかったものが数値で把握できるようになり、明確な品質基準を設けることができるようになる」ことをアピールすることから始めるのである。息の長い仕事であり、官公庁や業界団体と一体となりながら、数年間にも及んで一つの新しい基準をつくっていく。そうして、製品のセールスを展開していくのである。JISやJASの基準づくりをサポートすることも多いという。
 エンジニアの仕事が徹底した研究開発スタイルなら、営業はマーケット開発スタイルの活動を進めている。同社の開発型の事業によって、これからも数多くの業界標準、国内基準が設けられていくことになるであろう。