衛星授業のFC展開、
衛星デジタル多チャンネル放送への参入など、
先見性豊かな新手法で、教育のコンテンツメーカーをめざす

教育の技術革新、イノベーションを
テーマに総合教育ビジネスを展開

 同社は、予備校の経営と通信衛星事業を中心とした総合教育ビジネスを展開。1988年に店頭公開を果たし、経営基盤を強化。また、教育の技術革新として構築中の教育情報ネットワークをもとに、衛星授業のFC加盟校を750校に拡大している。さらに話題のパーフェクTV!では一般家庭への放送を開始。教育のコンテンツを充実させ、新しい教育の創造をテーマに、教育事業の多角化を次々と推進中だ。

「教育はビジネス」のスタンス

 当社は学習塾や予備校の経営を事業の柱にしている企業。予備校の組織といえば「学校法人」が一般的だが、当社はずっと「株式会社」の組織を貫いている。といっても、別に利益至上主義を掲げているわけではない。学校法人には運命面でさまざまメリットがあるものの、同時に「学校」としての制約も多い。株式会社のほうが、新しい事業展開や資金調達面での自由度が高い。当社では、教育の技術革新やイノベーションを一つのテーマとしているだけに、学校法人ではできないような斬新な戦略、大胆な投資がどうしても必要になってくる。そのために、あえて株式会社の組織体制をとっているのである。これは、「教育はビジネスである」という基本スタンスに立ち、教育の理想をめざす当社の企業姿勢の表れである。

講師陣、授業内容の充実を図る

 教育の質。学習塾・予備校に対する当社の考え方は、この1点に集約されているといっていい。たとえば講師陣の能力は、授業の質を左右する中心的な要素である。講師によって生徒の理解度、授業に対する興味も大きく変わってくる。そのため当社では、全国の有能な講師を結集させてきた。そして、当初の広告のキャッチコピー通り、有能な講師による充実した授業を提供しているのである。
 また、講師の能力だけに頼るのではなく、授業の内容に関しても一つ一つこと細かく分析・検討。授業の進め具合や盛り込む内容について講師陣と徹底的に打ち合わせ、授業の質的向上に全力を注いでいる。当社が経営する予備校の根強い人気は、こうした質重視の戦略によって実現しているのである。

21世紀に向けた当社の経営戦略

 1996年、当社では21世紀に向けた事業戦略を策定した。これは、21世紀における教育産業のリーディングカンパニーへと成長を果たしていくための基本となっている。その内容は、(1)教育分野のコンテンツメーカーとなり、(2)デジタル革命の波に乗る、(3)そして各事業部門のシナジー効果を狙い、(4)オープンなネットワークを構築し、(5)ディファクトスタンダード(事実上の業界標準)をめざす、という5つの柱で構成されている。教育のコンテンツ、つまり教育の中身の充実を図り、これを衛星通信やマルチメディアといった先進技術と融合し、当社独自のシステムをつくる。さらに、各事業部門の情報やノウハウを有機的に結びつけ、総合教育情報ネットワークを構築。教育に関するオピニオンリーダーとしての地歩を築いていこうというわけである。

全国の生徒がリアルタイムで受講

 質の高い授業を全国に展開する。このテーマには大きな壁があった。教室が増えれば講師陣もたくさん必要になり、授業の質的水準に開きが出てしまうからである。こうした課題を解決するものとして生まれたのが、衛星授業「サテライブ」であり、画期的なFC展開による衛星予備校である。サテライブとは衛星放送による授業のことで、91年にスタート。人気講師の授業を他の教室でリアルタイムが受けることができるようになった。また92年には、FC(フランチャイズ)契約を結んだ全国各地の学習塾や予備校にサテライブを配信する東進衛星予備校事業を開始した。教育の機会均等、地域格差の解消を実現する事業でもあったため、圧倒的な支持を獲得。FC加盟校はすでに700校に達し、2年後には1300校の加盟をめざしている。

衛星デジタル多チャンネル放送への果敢な参入

 96年10月、日本初の衛星デジタル多チャンネル放送がスタートした。50チャンネル以上の放送が可能で、放送関連企業や電気・電子メーカーなどのほか、当社も放送局として参入している。従来のサテライブの配信先は、直営校やFC加盟校に限定されていたが、これによって受験生の家庭に直接、授業を提供。距離と時間の差をなくしている。近くにいい予備校がない受験生も、アンテナとデコーダを購入して講座を申し込めば、自宅のテレビでハイレベルな授業が受けれられる。同時に、FC加盟校がターミナル的な機能を発揮し、きめ細かな学習指導やコンサルテーションを実施。予備校への長距離通学、夜間の学習塾通いなどの問題も解消され、受験の地域的なハンディキャプを埋めるシステムとして注目を集めている。

放送局としての当社の可能性

 衛星デジタル多チャンネル放送への参入によって、放送局として家庭に「番組」を提供できること。この意味は大きい。後述するが、当社は事業は予備校の経営だけではない。小中学校生向けの学習塾や、大学生・社会人を対象としたスクールにより、生涯教育も推進している。現在、衛星デジタル多チャンネル放送には2チャンネルを確保し、第1チャンネルでは、大学受験に関する授業や情報をメインに提供。第2チャンネルでは、中学校受験、教養・情報を中心に手がけている。いずれ、自宅のテレビで、国家資格などの資格取得講座を受講することも可能になるだろう。当社では、自ら新しい教育スタイルを実現する体制をつくりあげ、社会の中でより意義の高い事業を推進していこうと考えているのである。



不況下にあっても成長力を発揮

 当社は、1988年に株式の店頭公開を果たしている。その後、サテライブの実施、FC加盟校による全国展開、衛星デジタル多チャンネル放送への参入と、積極的な事業展開を始めている。株式の公開によって経営基盤を強化するとともに、外部からの資金調達も積極的に行い、さまざまな事業に先行投資をしてきた。その先見力が今、確かな実を結び、89年3月期にはわずか36億円だった売上高も、95年3月期には130億円へと急拡大。経常利益は8億9000万円を達成し、対前年比でいえば278%という驚異的なアップを実現ししている。

次々と広がる生涯教育の分野

 当社が掲げるテーマの一つが生涯教育である。大学生・社会人向けのスクールでは、カラーコーディネイト、フレグランス、フラワーデザインなどの教養講座を持っている。とくに資格取得試験は、その種類だけでも2000以上。今後も新分野を開拓していく考えである。
 また、新事業としては、パソコンが日常業務に不可欠となった現状をにらんで、新宿にPCスクールを開校。ビジネスマンを主な対象とし、初心者のための基礎講座から本格的なプロ養成講座まで、さまざまなレベルのパソコン学習を実施している。

総合教育産業への進展をめざす

 若年層の人口減少が叫ばれていることはご存じだろう。18歳人口はピークだった91年の270万人から減少傾向にあり、21世紀には150万人を切るだろうという予測がされている。そのため、学習塾・予備校の経営はすでに厳しい時代を迎えているのである。そうした中で、当社が好調な業績を実現している背景には、FC展開や衛星授業といった新しい手法を確立し、また生涯教育の充実によって生徒との接点を増やしてきたことがあげられる。今後、当社ではFC展開で培ってきた巨大教育情報ネットワークというビジネスの基礎を強化。企業における実力主義の浸透、高齢社会への移行の中で、「自分を磨く」という人々のニーズに応えていくために、提供する教育のメニューの幅を拡大していく。同時に、提供する手法としては、出版事業や放送事業など、他業種間にまで活動領域を広げていく。全方向に事業を伸ばしていくことで、総合教育産業としての歩みが可能になるのである。