高分子材料を建築に応用した会社は、
化学と建築の常識を次々と塗り替え、
いろいろな面や空間を創造中。

社会の強い追い風を受けながら、
新製品・新技術を核に業績を拡大

 同社は、高分子化学材料を建築の世界に応用した会社。画期的な防水工法を武器に、今日まで順調な成長を続けてきた。最近では、さらに新たな製品・技術も生み出しており、屋根や土木の領域にも確実に活動範囲を広げている。また、耐震建築のための屋上の軽量化など、さまざまな社会の動きも同社の追い風となり、ここにきて成長力を高めている。このビジネスチャンスをとらえ、3年後の店頭公開をめざしていくという。

柔軟に思考し、大胆に行動する

 駐車場、ビルの壁面、競技場トラック、テニスコートなど、当社の製品は生活の身近なところにあふれている。化学メーカーとしては後発になるが、逆に新しい企業ならではの独自性を発揮。現在では、国内随一のウレタン防水建材の生産量を持つまでに成長を遂げてきた。この成長の過程について、当社の社長は以下のように語っている。
 「成長の契機になったのが、77年に開発した防水工法です。ウレタンの物質特性を最大限に生かした複合防水技術で、この画期的な差別化商品によってその後の成長に拍車がかかりました。建築物の屋上の“面”を防水加工の対象にし、同時に屋上、壁、床、スポーツ舗装や舗道などのニーズも取り込み、新しい“空間”を創造する企業へと進展を遂げてきたわけです」
 “Flexible Thinking & Dynamic Action”、すなわち、柔軟に思考し、大胆に行動していくというのが当社の基本ポリシー。当社の社名には、この考え方が込められているのである。

2000年に向けた経営計画のテーマ

 当社では、2000年を最終年とする経営の5カ年計画を推進中だ。次々と生み出した新製品をもとに売上高を現在の2倍に拡大。同時に、自由に議論できる風土づくり、社員の主体性を育成を大きなテーマにしている。
 「防水工法という優れた技術を世の中に広めていった要因として、営業力も見逃せません。防水工法は、89年に建設省仕様に認定されましたが、これも強力な営業・マーケティング展開によって実現したことなのです。ただ、こうした基盤ができたために、無名の技術を広めていった時のような、失敗を恐れない前向きな姿勢がだんだん薄れてきてしまった。しかし、それではいずれ当社の個性がなくなり、より一層の発展はありえない。自ら考え、決断し、行動する。結果についての自己責任も負う。そんな主体性のある仕事、それができる組織や風土への変革をめざしているのです」
 とくに管理職を中心とした研修に力を入れ、風土改革を推進。また、営業推進部を新設し、最前線の営業活動の質的変化を進めている。旺盛な起業家精神に満ちた社員が、これからの当社を引っ張っていくのである。

新商品が成長を加速する

 「当社は今、かつてないほどのビジネスチャンスの時を迎えています。計画初年度も、予想を上回る業績を実現しました。新商品と社会の動きがマッチングし、巨大なマーケットを目前にしているのです」
 その一つが、ウレタンとFRPの複合で軽量化・強靭性を実現した駐車場防水「パワレックス工法」。大店法に伴う郊外大型店舗化、郊外型アミューズメントなどの急増で、駐車場防水のニーズが急拡大中だ。また、これを屋根に応用した「パワールーフ工法」もある。阪神大震災を機に、古い公共施設などが改修され、耐震改修で建築物の重量が増した分、屋上の軽量化が求められている。新築物件の軽量化ニーズはさらに高い。防水という観点で開発された工法が、社会の変化から新たなマーケットを創っているのである。一方、自然石透水型舗道「トールロード」などは土木の分野へ、超高速硬貨の「DD−SP工法」は土木とともに室内床といった内装分野への進出も果たしている。マーケットが縦にも横にも大きく広がっているのである。

自分がいなくても動く会社へ

 これからの当社は、起業家精神あふれる社員が壮大なマーケットを開拓し、一段と成長力を高めていくことだろう。しかし、いたずらに“起業家精神”という言葉を並べても、実際に起業家ぶりを発揮できる環境がなければ全く意味をなさない。そのため当社では、次期経営幹部を育てる目的の一つとして“分社制度”を導入してきた。これは、各営業拠点を独立した会社とみなし、その所属長を拠点の社長と考えて、運営に関する権限を大幅に委譲するというものだ。そうすることで、仕事の充実感を高め、責任感と自主性を持ったスタッフを育てているのである。
 「3年後に株式の店頭公開をめざしています。パブリックカンパニーとして強い企業基盤をつくり、もっともっと仕事に対するプライドを高めてもらう。そして、有能な後継者が育ったら、私はいつでも社長の座を譲る決意でいます。私のパワーも徐々に落ちるでしょうし、いつの時代も世の中を変えてきたのは若い人の力なんです。引退の目標を2005年において、それまでに必ず有能な後継者を育ててみせます」

人と環境に配慮

 事業は社会に有益なものでなければならない。こうした考えを実践する例が、「超速硬ウレタン機械化工法」だ。現場作業の軽減、工事時間の短縮、缶など産業廃棄物となる容器を使わないなど、人と環境に優しい工事を実現している。また、屋上緑化の事業は、地球温暖化の防止にも貢献している。

多彩な提携先

 当社では国内外のメーカーと積極的に業務提携。その商権を獲得するとともに、優秀な技術の吸収に努めている。国内外数々の企業と提携。現在も、アメリカ、日本で新たな提携の交渉を進めている。

ダイレクトセールス

 代理店制度を敷く当社では、代理店である施工会社が営業活動のアプローチ先となっている。商社を経由せず、ダイレクトセールスを貫いているため、マーケティングやコンサルティングのウエイトが高い。新商品を紹介したり、お客様のニーズに合った工法の相談に応えたり、あるいは代理店の支援活動も営業社員の大切な仕事になっている。このほか、官公庁の建築関連の部署に対しても、ビデオなどを活用した商品説明会を開催。また、ゼネコンや設計事務所、施主へのPR活動も行っている。
 入社後はまずPR活動を中心に行い、2年目から担当の工事会社を持つのが、標準的なキャリアステップ。また、営業の評価では、売上だけでなく、商品説明会実施の達成率といったプロセスも重視している。

人材交流

 営業社員育成の一貫として取り組んでいるのが代理店との人材交流である。中堅社員を1〜3年のスパンで代理店に出向させ、工事会社としての営業を経験。メーカーの営業にはない知識やノウハウを吸収し、当社に戻って最前線の営業部門で活躍してもらおうというもの。現在3社へ社員が出向している。

教育研修

 新入社員研修をはじめとして、階層別、職種別、部門別に研修カリキュラムを用意。また、教育を単独で考えるのではなく、能力評価や昇給昇格、トレーニングとをリンクさせた人事制度を確立している。このほか、年1回、会社に対して意見や希望をアピールできる場として、自己申告制度を設けている。