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当社のテクノロジーを確かめよう。
「ちょっと喉が渇いたからジュースでも買おうかな…」と、自動販売機にお金を入れる。この瞬間、キミはもう当社の製品を活用していたりする。当社の製品は、家電やクルマといった一般消費者向けのものではないので、どうしても人目には触れにくい。けれど、その製品は、実は街中のすみずみにまで浸透して、知らず知らずのうちにみんなが使っている。たとえば、硬貨を読み取って集計する製品やその紙幣版、さらに医療分野で期待されている先進技術まで。これらの製品に共通しているのは、決して表に出てこなくて、誰もが無意識のうちに使うということ。キミたちも自動販売機を利用するときに、ごく自然にお金を入れて、おつりを受け取っていたんじゃないかな。そう、“意識させない”ってとこに当社のテクノロジーが光っているというわけ。では、キミがよく行く場所。そこに生息している当社の技術を紹介していこう。
自動販売機用硬貨集計製品のからくり
4種類の硬貨を自在にコントロール
この製品では、様々な種類の硬貨を扱うようになっていることが特徴。たとえば、受け入れるのは500円玉・100円玉・50円玉・10円玉の4種類。110円のジュースを買うのに500円玉を投入して390円のおつりを出すとすると、100円玉が3枚、50円玉が1枚、10円玉が4枚、と3種類の硬貨を払い出すことになります。で、これまでなら、払い出し部分で3つのモーターを使っていました。10円・50円・100円を扱うメインモーター、500円専用のモーター、そしてサブといって補充用釣り銭のためのチューブのモーター、の3つ。硬貨の種類が増えたからといって、モーターも増やすと、コストは高くなるし、小型化も図れない。そこでモーターを一つにして、あとはクラッチでカムとギヤを動かし、必要に応じて連結させて切り替えています。シンプルな構成で動作を複雑に。そんな相反するテーマに日夜取り組んでいるのです。
2つの頭脳を1つに集約
電気的には今まで、硬貨選別部と払い出し部で、2つのCPUがあり、別々の基板になっていました。それぞれ独立していたほうが制御も簡単なんですが、低コスト化を図るためにこれを一つにまとめました。とにかく1つのCPUで選別・払い出しと2つの動作を同時に制御するので、ソフト的に非常に複雑な処理になっています。硬貨が入って、正貨だと判定したら中に入れ、偽貨なら返却口から戻す。判断でもたつくと、レバーの動作が遅れてしまいます。それに入ってきた正貨も、種類を一瞬のうちに判別して、それぞれのチューブへと導いてストックするわけですから、ソフトの実行スピードが求められます。その辺が大変でしたね。
じゃあ、ここで問題。
500円、100円、50円、10円それぞれの硬貨を
どうやって一瞬で判別していると思いますか?
硬貨はこうして瞬間的に選別する
大昔ならメカ的に選別していたが、それでは機構が複雑になり、どうしても誤認識が起こりやすい。というわけで、今はセンサーや電気・電子の技術で、高精度な識別を行っている。その仕組みはこうだ。まず投入された硬貨の通り道。ここに電磁場が設けられている。硬貨が通ると、電磁場との相互作用で磁束が変化する。その変化量を測定し、電気的に分析していくことで、材質・外径・厚みなどから判断しているのだ。もちろん、正貨の中にも新品もあれば、年月が経って変形しているものもあるし、もともと微妙な製造誤差もある。そこでいくらかの誤差範囲を設け、その範囲を超える硬貨を返却口に戻すのである。事実上の判定精度は100%。ユーザーに対しても95%以上の判定精度を保証している。
アミューズメント用ビルバリデータの秘密
小さく、薄いスペースの中で識別を行う。
たとえば、パチンコ店の台と台との間の狭いスペース。ここにも「サンド」と言われるビルバリデータ(紙幣識別機)が設置されています。これの特徴はとにかく薄いところに入る小型・薄型の製品であること。限られたスペースの中で機構を考え、使えるモーターや部品を選定していくという感じです。この機種では、1000円札、5000円札、1万円札の3種類の識別が可能。お札は使っているうちに、自然と汚れやシワ、折り目などがついてしまうので、これをもとに「偽札」と判定してしまうと、お客さんは不便。そこで、ある程度の許容範囲を設けて、正札か偽札か、正札なら金種は何かという判定ができるようにしてあるわけです。それも、ローラーでお札を引き込む際に「すべり」が生じても、独自のアルゴリズムによる「すべり誤差補正プログラム」によって、お札の正しい姿を推論する仕組みが盛り込まれているのです。
100万回の使用をめざした耐久性
もう一つ、アミューズメントの特徴が、1日に使われる回数が非常に多いこと。一般の飲料水などの自動販売機のビルバリデータなら3万回ぐらいの耐久性があればよかったんですが、アミューズメントスペースだと3万回ではもう1週間で寿命がきてしまうほど。理想的には、100万回の耐久性が求められています。こうなると、当然のことながら、モーターをはじめとする電子部品、機構部品などの設計が根本から大きく変わってくるというわけ。アミューズメント向けの製品に取り組んだおかげで、当社が持つ耐久性のノウハウも大きく向上したほどなんですよ。
QUESTION
さあ、僕からの問題です。
モーターの耐久性はおよそ30万回です。では、
どうやって100万回使用のニーズに応えているのでしょうか?
ANSWER
メンテナンスを工夫したのであった。
どう考えてもモーターの耐久性が足りない。もしも100万回の耐久性が保証できるモーターを使うと、コストが高くなってしまうし、きっとパワーが大きく、製品自体も大型化してしまうにちがいない。そこで、30万回の寿命が来たときに簡単に取り替えができる仕組みにしているのだ。実は、メンテナンスをしやすくするという提案は、当社が長年取り組んできたテーマの一つ。もともと当社の製品は、メンテナンス時にまで配慮を払ったものが多い。メンテナンスが大変だと専門の技術者必要になるし、障害が発生すると機械は「故障中」となって使用停止の状態になってしまう。これではいけないということで、メンテナンスの技術者でなくても、工具を使わずに分解できて、また元通りに戻せるメカニズムを採用しているのだ。とくにトラブルが発生する可能性があるところはユニット化し、メンテナンス性を大幅に向上している。
テレホンカード販売機、その技術の結集
電話ボックスの中にあるテレカの販売機
最近、電話ボックスの中に、必ずと言っていいほどテレカの販売機が併設されていますよね。実はあれを考え出したのが、当社なんです。最初は通常のテレカ販売機をつくっていたんですが、「やっぱり、テレカが一番売れるのは電話機の横なんじゃないかな」という発想でNTTに提案したんです。その提案が受け入れられ、ボックスの中に設置できる小型の販売機を新たに開発したというわけです。テレカの販売機では、およそ50%のシェアを築いているんですよ。
ドロボーとの知恵比べ
まあ、自動販売機はなんでもそうですが、販売機の中にはテレカや代金といった貴重品が詰まっています。この製品ではテレカが数百枚も入っているんです。すると、やっぱりドロボーから守らなければいけないということで、いろいろなセキュリティーが盛り込まれています。カギを使わずに扉をこじ開けようとしても、本体を運び出そうとして傾斜させても、運良く運び出せても、またドリルで穴をあけようとしても、という具合にドロボーがあの手この手を使っても、各種のセンサが関知する仕組みになっています。もちろん、警報ブザーを鳴らすだけでなく、オンラインでセンターに通報するシステムになっているんです。いつだったか、どうやったら壊れるかという実験もしていますが、つくった自分たちも結局壊せなかったほどです。
QUESTION
では、問題です。
ビルバリデータに入ったお札は、
どうやって束ねているのでしょうか?
ANSWER
ドラムを使っていたのであった。
何枚かのお札を手できちんと束ねようとするとわかるけれど、この作業って意外にスペースを使うもの。ところが機械の中となるとスペースはないし、そのスペースもどんどん小さくして、ビルバリデータ自体を小型化していくことが進んでいる。最新の方式では、紙幣受け入れ溝のついたドラムを回転させ、中央のスタックプレートで支え上げることで、挿入されてきた紙幣を格納庫へと送り出すシステムになっている。これによって、スペースはドラム軸の分の厚みだけで済むようになり、また一段と小型化を実現したのである。
次世代カードリーダ/ライタの新技術
光カードとハイブリッドカード
光カードは、カード1枚に2.8Mバイト、磁気カードの約4万倍、ICカードの約350倍の情報量が書き込める追記型の大容量のカードです。光カードの読み取り/書き込みには半導体レーザーを利用。12μmの間のガイドライン内に、2.5μmのビット(孔)で、デジタルで記録されていきます。読み取りは、半導体レーザーユニットで発生させたレーザーを照射。読み取った反射光はフォトダイオードを経由してアナログの電気信号へと変換され、電気回路へと渡されていきます。現在、カードには磁気、IC、光といろいろなメディアがありますが、これらの3つを一体化したのハイブリッドカードのリーダ/ライターも当社では開発しています。磁気、IC、光とそれぞれの特性を生かした形で使い分け、病院や物流など、様々な分野のマーケットへと製品を納入しています。
リニアモーターによる970cm/分の高速搬送
光カードリーダ/ライタの新製品で活用しているのが、あのリニアモーターです。モーターの設計・開発については当社が基本的な仕様を固め、それを専門メーカーに発注して開発するという方法で行いました。とくに記録に際しては低速で行ったほうが確実なんですが、独自の技術によって970cm/分という高速でのカード搬送を可能にしました。機構的なスピードアップを図ることによって、いろいろな用途への応用もできるようになっているんです。
QUESTION
光カードに傷がついても、
エラー訂正ができるようになっています。
どのような方式で訂正をしているのでしょうか?
ANSWER
インターリーブ回路を応用していた
取り込んだアナログの波形データをデジタル変換し、これを一旦バッファ(RAM)に蓄える。この際、決まった縦/横のマップの中に順次ビットのデータを入れていくのだが、横列、縦列でそれぞれデータの“足し算”をする。そして、仮にまちがったビットがあっても、データをデータを1か0にそれぞれ反転させ、補正してしまう。数ビットまでのエラー訂正はこれで可能で、もしもカードが傷ついたり汚れたりして、データ部分が破損しても安心なのである。
海外向けビルバリデータのノウハウ
識別ポイントは日本向け製品より多かったりする
アメリカのお札は、切手シートのように連続して印刷されているものを、お店などで人が手作業で切って使っているんです。ですから、お札自体の幅が±5ミリぐらい違っていることもありますし、余白の部分が多かったり少なかったりまちまちなんです。あんまりひどいとセンサの位置がずれて、読みとれなくなってしまうんですよ。それに、日本はそれぞれ大きさや形状が異なりますが、アメリカのドル札はどれも似ているんです。また、アメリカ国内だけでなく、カナダドルなどの紙幣が入れられることもあるんです。こうしたレベルで認識ができないといけないのです。「絶対にここが、こうでなければいけない」という識別ポイントは日本よりも多いんです。
世界の紙幣・硬貨を入手し、試験を実施
もう一つ、海外向け製品の特徴は、ユーザーが遠いということ。アメリカの現地法人のスタッフがお客様と対応をしていたり、何回もFAXでやりとりをしたり時間がかかります。また、社内では紙幣、硬貨ともに世界中のお金を取り寄せて、設計や試験に使っています。中には似通った外国の硬貨もあるので、海外で新しい硬貨が出るとすぐさま入手。ほとんど世界中の全種類の硬貨で綿密な試験をしていますね。新しい偽札が出回っているという情報を得ると、実際にその偽札を手に入れて、対策を練ることもあります。
QUESTION
アメリカ向けに出している硬貨集計製品は、
いったい何種類の硬貨を選別するのでしょうか?
ANSWER
アメリカ、カナダ合わせて8金種
実は、カナダの硬貨も受け入れるようになっている。アメリカの10セント、25セント、50セント、1ドルの4金種のほか、カナダの硬貨も4種類扱いますから、合計8金種を選別しながら、なおかつ偽貨や他の硬貨を選別するというわけ。また、どちらの国でも年代によって硬貨の材質が微妙に違うため、新旧の硬貨もきちんと識別できなければならない。
新技術の研究
現在、一人で一つのテーマを追求中
開発研究室のメンバーは10数名。次世代の要素技術の研究を主業務にしています。基本的に今使われている先進的な技術は開発研究室でつくりあげたものがほとんどなんです。私自身は、新技術の研究開発をメインに担当していて、とくに電気・ソフト系の技術を研究中です。研究のテーマは、グループで担当するようなものから、一人で最初から最後までおこなうものまでいろいろ。中には、大学や他の企業との共同研究に取り組んでいるメンバーもいますね。最近は一人で一つのテーマを担当していますね。こういう場合、一人一人がプロジェクトリーダーという感じで、予算の申請から研究計画の立案まで、すべてが任されます。
フレキシブルな技術開発の体制
たとえば一つのテーマがある程度カタチになってきたとします。すると、技術部へと受け継がれ、実際の製品開発がスタートします(もちろん、カタチにならない研究も多いんですが…)。この際、そのまま技術部に移って製品開発を担当するケースもありますし、また開発研究部に残って別のテーマに取り組むこともあるんです。私自身、3年ほど前までは技術部で設計を担当していましたし、技術と研究の位置づけは密接ですね。いろいろなことを経験するチャンスがある会社なんです。